現在の日本企業の成長のために最も重要なものは何でしょうか?
無理にでも一言で表せと言われれば、私は「量より質への転換」が考えます。この考え方は、経営者が「売上高を増やすにはどうしたら良いのか」とは考えないように勧めることです。
日本企業に限らず、企業の成長のために重要なものと言われれば、多くのことが思い浮かぶでしょう。
例えば、ビジョン、戦略、中期経営計画など経営面で必要な成果物を挙げる人も多いでしょう。人的資源、資金力、技術力などの経営資源を挙げる人も多いでしょう。団結力、チームワークなど企業組織のまとまりに関する要素を挙げる人もいるでしょう。
だが、ここで、「現在の」、「日本企業の」と限定し、なおかつ、一言でとなると、経営に関する要素ではなく、特定の考え方を変える必要があると考えます。
売上高を増やすためにどうしたら良いのか、頭を悩ませている経営者は少なくないでしょう。多くの経営者は売上高を気にします。昨年度よりはもっと成長したいと思うのは自然です。売上高で同業他社を比較するのも自然です。だからといって、企業のことを考えるのに売上高ばかりをどうするのかを考えるのは極めて不自然と考えます。
売上高を増やすためにどうすれば良いのかを考える際、日本人は問題を小分けして、小さな問題を解決することで、大きな問題を解決しようとする人が少なくありません。そのやり方で当てはめると、売上高を増加させるには、客単価を上げるのか、販売客数を増やすのかに分けます。その上で、客単価を上げるには具体的にどの財の品質を向上させて価格を上げたら良いのかとか、ついで買いを増やすためにはどうしたら良いのか、付属品を購入してもらうためにはどうしたら良いのか、と考えます。販売客数を増やすには、キャンペーンを打ってみたら良いのではないか、とか、値下げをしたら良いのではないか、などと考えます。
だが、売上高は結果でしかありません。もちろん、経営していく上で、利益を上げなくては継続的な経営はできません。利益を上げるためには一定の売上高を確保しなければ、事業として成り立たません。だが、売上高は結果でしかありません。
売上高はお客様に提供した財の価値を認めてもらい、購入して頂くことで成り立ちます。ならば、売上高を増やすためには、「提供する財の価値を高め」、「その価値を評価して頂けるお客様に適切に提案する」ことが、重要となります。
上記に挙げた問題を小分けする事例は、既存の提供している財の延長線上で考えることになります。ここでは、「量」をどうするのかを考えることが多くなります。なにしろ、売上高自身が「量」です。
先程、売上高を増やすためには、「提供する財の価値を高め」、「その価値を評価して頂けるお客様に適切に提案する」ことが、重要と書きました。しかし、この2つの側面はお客様に提案するという1つの事業の中で向上させなくてはならない。つまり、片方の側面だけ向上させたからといって、もう一方の側面が向上するとは限らないのです。
例えば、財のスペックを向上させたとして、それがこれまで提供したお客様全てに評価してもらえるとは限りません。評価してもらえるお客様がいるのであれば、そのお客様に向けて適切に組み合わせて提案することが必要になります。逆にその財の特定のスペック向上させるぐらいなら、その分を変えずにして安くしてくれというお客様もいるかもしれません。
さらに、「提供する財の価値を高め」、「その価値を評価して頂けるお客様に適切に提案する」という2つの側面は、どこに力点を置いてみるのかでも行動の仕方は変わってきます。例えば、特定の能力を伸ばすことに力を入れているのであれば、その能力を伸ばした水準を想定して、価値を評価してくれるお客様の区分を探して、そのお客様に向けて組み合わせることになります。一方、試作品を特定の区分の消費者が気に入って、良い反応を見せていたら、そのお客様に向けて、より評価してもらえる財を提供しようとすることになります。
ここで重要なのは、上記行動内容を考える際には、色々と試行錯誤が必要であることです。技術導入・改善・改良や問題解決よりも試行錯誤の範囲が広くなります。
昭和の高度経済成長期とは異なり、買い手市場でモノが溢れている現在、売上高を増加させるには、問題を解決するという考え方よりも、スキル、技術力などの能力と、それを組み合わせて特定の効用を得る財を作り、それを評価してくれそうなお客様に提供する、という考え方の方が重要になってきます。
その考え方は、問題解決や真似などによる技術導入や改善・改良、さらには、日本企業の硬直化の特徴として私が挙げている「追いつけ追い越せ行動様式」よりも、結果が出る確実性は低いですが、考える範囲が広くなります。
「量より質への転換」は組織のあり方を修正する必要が出てくる転換内容です。現場の従業員個人のスキルや考え方も、中間管理職の仕事の内容も変わってきます。
もちろん、全て「量より質への転換」を取り入れなくてはならないと主張するわけではありません。この考え方を取り入れることによって、考える範囲が広がり、その広がりによって幾つかの成功が生まれれば、生産性向上にもつながります。
多くの日本企業は、高度経済成長期での成功体験である、技術導入・改善・改良を行える余地が少なくなっていて、頑張っても売上高が上がらなくて苦しんでいます。
「量より質への転換」、すなわち、「提供する財の価値を高め」、「その価値を評価して頂けるお客様に適切に提案する」ことを考える必要性が高まっているのではないでしょうか。
現在、私はこの「量より質への転換」をどのように企業に取り入れるのか、さらに、現在巷で話題になっている働き方改革にどのように関わらせたら良いのかを研究しています。近い将来、その成果をこのWebにアップします。
この記事自体は具体的な内容になっていません。具体的な成果を公表する決意表明をして、この記事を終えます。
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