働き方改革を促す生産性向上の取り組みについては、3つの方向性を同時に行うことを提案します。
(1)人的資本投資の増加を促す
(2)当期の目標ではなく、2~3年後に結果が出るようなマネジメント体系に変える
(3)情報技術水準向上の恩恵を受ける方法を取り入れる
上記の内容は、一般的には生産性向上の取り組みと考えられていません。
日本企業は研修など人的資本投資が少ないという認識をほとんど持っていません。情報技術も充分に使いこなしていると勘違いしています。マネジメント体系も目標設定された売上高を達成するように尻を叩くことが管理職の仕事と勘違いされている企業も散見します。
そこにこそ、日本企業の成長の可能性が秘められています。日本企業の業績向上には不可欠な方向性ばかりです。
以下、説明します。
(1)人的資本投資の増加を促す
『日本企業の成長に必要なのは2~3年の人の成長を促す仕組み』の中で説明しましたが、2010年の数字で比較すると、無形資産投資額全体の中の人的資本投資の割合は、アメリカは11.7%、ドイツは14.7%に対して、日本はたった1.3%に過ぎません。
これでは国際競争力が低下するのは当然のことです。
働き方改革を行うのであれば、労働時間削減につながる生産性向上を図らねばなりません。そうであれば、当然、従業員の能力向上は不可欠です。さらに、その能力向上をどのように事業の競争力強化につなげていくのかを、他の要素と組み合わせる能力も向上する必要があります。
今の働き方改革において、人的資本投資の増加を組み込む主張がほとんどなされていないことに強い違和感を抱かざるを得ません。
(2)当期の目標ではなく、2~3年後に結果が出るようなマネジメント体系に変える
マネジメント体系も目標設定された売上高を達成するように尻を叩くことが管理職の仕事と勘違いされている企業も散見します。しかし、上記「(1)人的資本投資の増加を促す」を促すのであれば、短期間で結果を求めるのは無理があります。とはいえ、研究事業のように長期的に見る必要はありません。2~3年後に結果が出るような内容を求めれば良いのです。
そのためには、中間管理職の評価基準に部下の成長を加える必要があります。尻を叩くだけでは、部下の成長はできません。部下の成長を促すためにどのような目標を設定したのか、その成長にどのような支援をしたのかを評価する必要があります。そのような取り組みを行うことで、労働時間を短縮しても対応できるだけの従業員の能力向上を図れるのです。
また、日本企業は、「追いつけ追い越せ行動様式」を色濃く残しています。
「追いつけ追い越せ行動様式」での行動を箇条書きにすると以下のとおりです。
①優れた製品を真似て同じような製品を作ります。
②製品の評価基準の延長線上で絶え間なく改善・改良を続けて、真似た製品を追い越そうとします。スペック向上、コスト削減、不良品削減、携帯性向上などに挑みます。
③オリジナルの製品を作る場合、真似た対象と同じような完成度の高い製品を作ろうとします。
④「追いつけ追い越せ行動様式」で説明できる内容には果敢に取り組みますが、説明できない内容には及び腰になります。
⑤企業の行動様式だけではなく、技術的側面では、人の教育においてもこの行動様式で動きます。
「追いつけ追い越せ行動様式」で承認された内容以外は短期的に結果を求める傾向があります。それが、日本企業の閉塞感を打ち破ることができない状態になる要因の1つです。
この状態を打破するためにも、2~3年後に結果が出るようなマネジメント体系への転換は必要です。
(3)情報技術水準向上の恩恵を受ける方法を取り入れる
『日本企業はIT投資を組織内でうまく活用できないと認識すべき』で説明しましたが、日本企業はIT投資を組織内でうまく活用できていません。
生産性向上のためには、IT投資で効率化だけではなく、企業の価値提供体系を育成する必要があります。
例えば、上記(1)、(2)との関わりから言えば、従業員の教育を行って能力向上が果たせたのであれば、その能力向上を他の要素と組み合わせることで、事業の競争力強化につなげることになります。
その際、どのような組み合わせが良いのか、日頃の事業を行いながら新たなことができるのか、などを考える必要があります。従来の事業運営だけのためのIT投資ではそのような取り組みを行うための情報が収集されていません。
企業の価値提供体系を効果的に運営するための方法の修正は、まだまだ多くのことができる可能性があります。
上記3つの方向性を後で詳しく説明します。
働き方改革の必要性が叫ばれている今こそ、生産性向上に取り組む意味があると考えます。
コメント