日本企業の成長のために最も必要な要素は何でしょうか。
1つに限定しろと言われたら、「2~3年の人の成長を成果に結びつける仕組みを整備して、人の成長のための投資を増やすこと」と考えています。
日本企業の人的資本投資は米、独と比べて著しく少ないです。これでは競争に勝てるわけがありません。
2010年の数字で比較すると、無形資産投資額全体の中の人的資本投資の割合は、アメリカは11.7%、ドイツは14.7%に対して、日本はたった1.3%に過ぎません。
「人を大切にする経営」などと言っている経営者は少なくないですが、人的資本投資が少ない現状は、少しも人を大切にしていないと言っても、言い過ぎではありません。
日本企業の場合、雇用を守ることに重きが置かれ、首を切らなければ人を大切にしていることになる、という考え方があります。しかし、それは最低限の水準です。
目指すべきは、研修など人的資本投資を増やして人の成長も促すことです。企業の競争力が向上すれば、首を切る必要はないのですから。
日本企業は人的資本投資が少ない事実に対して真摯に向き合わねばなりません。
とはいえ、やみくもに研修すれば企業が成長するわけではありません。企業が成長するために必要な研修を行わなければ効果は発揮できません。
問題は、企業の成長に必要な研修内容をどのようにして作り上げるのか、です。
研修内容を検討する前にやらねばならないことがあります。従業員個人に適した課題を設定することです。
人はそれぞれ成長度合いが異なります。課題も異なります。無理に同じ課題を与えるばかりが良いわけではありません。
スポーツは全体練習をします。それだけではなく、個人がそれぞれの課題をもって個人練習も行います。それによって、個人の技術の成長度合いに合ったトレーニングができるようになります。
研修内容を考えるには、現状の従業員個人の成長に適した課題設定を行うことが先決です。それも事後検証を踏まえて、適切に設定することが必要です。
その結果を基に、企業全体でどのような研修が必要なのかを把握する、新しい取り組みがあればそれを取り入れる、個人で成果を上げた訓練方法を企業全体で活用する、などの取り組みが可能となります。
日本企業は従業員個人の問題解決力に依存し過ぎている経営をしている可能性があります。日本企業の人的資本投資が少ない要因はそこにあるのではないでしょうか?
インターネット上に、日本人の「できません」は信用するな、と外国人が言ったとされる言葉があります。これは、日本人が「できません」と言ったとしても、無理にでも仕事させて、尻を叩けば、「できません」と言っていた仕事もやってしまう、という意味です。
つまり、日本人が「できません」という仕事をやらせることで、期待以上の効果を得ることができる、ということです。
これは、日本人の問題解決力の高さが評価されている言葉です。
この日本人の問題解決力の高さに日本企業は頼りすぎではいないでしょうか。
人的資本投資が米、独よりも著しく少ないのは、その現れではないでしょうか。
ポイントは、2~3年に跨がる取り組みをより効果的に成果に結びつけるには、どのような仕組みが必要かを考えることでしょう。人の成長は継続します。1年で終わりではありません。
幸いなことに、情報技術水準の向上によって、安価でクラウドコンピューティングが導入できる時代になりました。人の成長を直接捉えることはできませんが、行われた仕事の内容に関わるデータを蓄積できるようになりました。それを分析することによって、従業員個人の成長を促す課題を設定する材料を集めやすくなりました。
2~3年の中期的な従業員個人の成長を促す仕組みを作ることは、今の日本企業の成長にとって、極めて重要な手法と考えます。
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