部門間で協力し合わなければ、大企業との競争を戦うことができないのに、生産部門と営業部門がお互い仲が悪い中小企業の話は良く聞きます。
蛸壺化とは、端的に言えば、部門間連携ができにくい状態を表します。部門間連携の必要な仕事がなかなか進まなかったり、積極的に取り組まれなかったりして問題が生じます。
蛸壺化は何らかの事情で他部門の協力を依頼しようとしたが、自分が思ったような協力してもらえない場面で意識します。その人は部門間に壁があるように認識します。
蛸壺化という言葉は、部門間の壁という認識とはまるで異なる概念のように感じます。部門間に壁があるのに、誰が名付けたか「蛸壺化」と表現されています。蛸壺化の多くの場合は、自分達が蛸のように自ら蛸壺に入り込むことで事態が進行するのです。
蛸壺化で不満を持っている人々は組織の壁を意識します。だから、壁をどのように突き破るのかを考えようとします。壁があるという問題があれば、壁をぶち破ることを考えるのは自然です。だが、壁と意識している限りは、相手に対する不満ばかりを貯め込むことになります。
本来、企業が提供する製品またはサービスは、顧客に満足してもらう目的で提供しています。人は専門化することで高い水準の仕事ができるので分担して仕事をしています。通常なら標準的な仕事では事前に取り決めを行って、それに基づいて仕事をします。
しかし、標準的ではない仕事、通常よりも多くの受注をした仕事、顧客事情に応じてカスタマイズしてより高い水準の要求に応えようとする仕事などは、事前に取り決めたこととは異なる調整をしなくてはなりません。
その際、協力しようとしている相手が何をしているのかがわからない、相手の事情がわからない、相手がどのような評価基準で動いているのかがかわらない、将来に向けて何を目指しているのかがわからない、などの事情が絡まって、相手が何を考えているのかわからないと考えるようになってしまいます。これが当事者にとって壁として意識する存在です。
第三者からみれば、それは自らが蛸壺に入ったまま出ようとせず、その蛸壺が空いている口から他の蛸壺に向かって声を発しているように見えます。
何事も交渉する場合、相手の考えていることや相手の事情を知ることが大切です。その上で、自分にとっても相手にとっても良い状態を作り出すために、自分が自分の行動基準をどこまで変えることが可能なのか、相手に行動基準をどこまで変えてもらうことができるのかの接点を探ります。『蛸壺化緩和はコミュニケーションが大切。分担して城壁を直す例』
この蛸壺は言うなれば、組織内の行動基準です。お互いの行動基準をそのまま使っていては、問題が解決しない場合は、お互いが蛸壺から出て、自らの行動基準とは異なる行動規則を作る必要があります。
つまり、蛸壺から出て、相手のことを知ろうとすること、自分の行動基準を変えることを考える必要があります。
蛸壺化が進展する理由、また、それぞれの部門の独自性が強くなってしまう理由は、部門間の調整が難しいと考えてしまい、調整が必要な仕事を極力しないようになってしまうからです。あたかも蛸壺に入るように自分達の仕事に専念する時間を増やしてしまうからです。専念すればするほど他部門の人々に対する理解が進まず、その人々の状態がわからなくなり、連携がより難しくなります。
企業や規模や業種によって進行度合いは違いますが、多かれ少なかれ蛸壺化は発生するものなのです。企業は、部門間連携は調整が難しいので対策が必要と企業内で位置づけて、何らかの対策を取ることが重要です。その場合、売上高は多少減少するかもしれません。しかし、その努力をした分だけ広い範囲の仕事ができるようになれると考えるべきでしょう。
なお、組織風土改革を行う場合、組織硬直化に苦しんでいる企業は、多くの場合、蛸壺化しているため、まずは蛸壺化を緩和することが基本的な取り組みです。
しかし、多くの日本企業には共通した組織硬直化の特徴があります。そのことが、組織硬直化緩和を難しくしています。『蛸壺化緩和施策だけでは日本企業の組織硬直化緩和は難しい』
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