高校時代は「文武両道」を期待されたのに、ビジネスでは2種類の仕事を高い水準で満たすことは期待されません。それはなぜでしょうか。そのような能力は必要ないのでしょうか。
1.文武両道
もうすぐ春の選抜高等学校野球大会が始まります。今年は3月19日~31日までの予定で開催されます。
甲子園では野球に強い私立の名門高校と公立高校が対戦した場合、公立高校に対して、より多くの応援が送られます。高校関係者がいるスタンド以外の球場にいる人のほとんどが公立高校に対して応援するような雰囲気になることがあります。
時々、そのような声援を受けて、公立高校が逆転することがあります。個人的には、高校の背景とは関係無しに、平等に勝負を見て欲しいと思います。
このような現象を見ると、日本人の多くは、文武両道を頑張っている高校生の方を応援したがるようです。
文武両道を果たそうとするならば、限られた時間制約条件の中で、高い集中力で取り組む必要があります。そうすることで、2種類の課題を高い水準で克服しようとします。
文武両道を果たすには、どちらか1種類しかやらない人に負けて当然とは思わないで、集中力を高めることで勝負しようとする心構えが不可欠です。
2.異なる2種類の要素を同時に高い水準を満たす
ビジネスでは、異なる2種類の分野での要素を同時に高い水準を満たすように言われることはあまりありません。
その理由は、与えられている目標が、一つでないと達成できないような高い水準に設定されていることが多いからです。
もちろん、二つの仕事を同時に、任させることはあります。しかし、それは一つの職務の中の話です。
現在は情報化技術が発達しました。クラウドコンピューティングなどを活用することによって、パソコンがインターネットにつながればできる仕事が増えてきました。
働く場所を自由にできるようになれば、仕事と生活を自由に組み立てることができれば、「仕事」と「生活」が両方同時に高い水準の充実を図る可能性が高まります。
女性とデートする日には別人のように仕事をこなす男性を見た経験は多くの人が持っているでしょう。毎日そんなふうに仕事しろよ、と言いたくなります。そのような人が仮にもっとデートし易い環境を手に入れたら、もっと仕事をするかもしれません。
同様に、日頃行っている「定型の仕事」と、特定のスキルを磨いて、それを有効に活用した「企画を作る仕事」を両方同時に高い水準を満たすことも可能、となるはずです。
企画を考える際、特に長時間考えて煮詰まったときに外に出て、アイデアが思いつくこともあります。職場以外の人と話をすることで、柔軟なアイデアが生まれる時があります。職場以外のところでスキルを磨くことが認められれば、磨くスキルの種類も広がります。
一つの製品でも、「…」でありながら「…」というような異なる二つの特徴を同時に高い水準を満たすようになれば、新たな価値になる可能性があります。
そもそもビジネス自体が「自らの得手を使って人を喜ばすもの」です。つまり、「どのような得手を磨いて使うのか」、「どのような人を喜ばすのか(その人が求める効用に適合させるのか)」は自らで選択できます。
つまり、特定の得手を使った成果物を色々な要素を組み合わせて作ることは同じでも、組み合わせる要素を変えて成果物を変えることと、ターゲットを変えることができます。
それによって、「成果物の市場競争力」と「ターゲット消費者が評価する効用に対する適応度合い」の二つの要素を同時に高い水準を満たす思考とも言えます。
『「学習」と「スポーツ」』、『「仕事」と「生活」』、『「定型の仕事」と「企画を作る仕事」』、『「…」でありながら「…」』、『「どのような得手を使うのか」と「どのような人を喜ばすのか」』と二つの要素を考えるものを列挙してみました。
これらが、二つの要素を同時に高い水準を満たすための条件はそれぞれ異なります。
共通して言えるのは、一方を極めて高い水準にしようとするとバランスが崩れてしまうことです。
3.問題解決能力向上だけにこだわらない
日本人は、問題解決に強いです。どのようにするのかを試行錯誤することは強いです。
しかし、上に挙げた二つの要素を同時に高い水準を満たす思考は苦手と考えます。言い換えれば、何をするのかを試行錯誤することです。
この思考は苦手というよりは、ほとんどしないからできない、と言い換えた方が適切かもしれません。日本人及び日本企業があまりにも「どのようにするのかを試行錯誤すること」が得意で、何らかの結果を出してしまうので、「何をするのか」を考える必要性が乏しいからです。
もし、仮に日本人にそのような能力が向上すれば、新たな価値向上を図れると考えます。
これから、このような思考はどのようなものかを考えて行きます。
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