定められた内容を確実に速く処理できれば良い、と思う人も多いでしょう。
ワーキングメモリに余裕を持たせる段階は、技術向上の1つの重要な段階と考えます。特に、技術を応用する際の複雑な取り組みがやりやすくなります。
日本社会では、この段階をあまり重視しませんが、私はもっと注目して欲しいと考えています。
ワーキングメモリとは何でしょうか。
ワーキングメモリは、頭の中で情報処理をする時に必要な記憶を使う部分です。パソコンでのRAM・随時アクセスメモリに当たります。
ちなみに、記憶している部分は、パソコンでいうところのハードディスクに当たります。ワーキングメモリではありません。必要な時に情報を取ってきて、ワーキングメモリで使います。
ワーキングメモリの使用量を少なくなる状態はどのようにして生まれるのでしょうか。他にもあるかもしれませんが、3つ考えられます。
(1) 複数のパーツの集合体を1つものとして記憶すること
(2) 失敗要因がどこにあるのかわからないため、多くのことに注意していたが、ポイントを絞り込むことができたこと
(3) 技術能力が向上し、手順、やり方などが体に覚え込まれ、特に頭を使わなくても求める内容を処理できるようになること
です。
(1) については、複数のパーツに分けられるような手順を慣れると1つの動作と考えるようになることです。
例えば、やりはじめの時には6つのパーツに分けていたものだったとして、それが習得されれば1つして数えられます。6つから1つに記憶を使う量が減れば、ワーキングメモリの使用量が少なくなります。
技術を習得する初期の段階のものですが、高度な取り組みをして、もっと多数の手順を組み込む際にも、必要な段階です。
(2) については、慣れるまでは疲れていたが、慣れたら疲れなくなったことはないでしょうか。
やり始めた頃は失敗しないようにしよう、と知らず知らず多くのことに気を回していたはずです。ある程度慣れると、気を付けるポイントがわかってきます。
手を抜くわけではないですが、重要なポイントがわかれば、それに注意すれば良く、他のことに気を回さなくて済みます。そうなれば、より失敗しなくなります。
(3)については、忙しい時のスピードよりもゆっくり処理できる時に、忙しい時には見えなかった周りの状況とか、対応するお客様の反応とかが見えてくることはないでしょうか。
ゆっくり処理する時にはワーキングメモリの使用量が少なくて済み、周りが見えるようになったのです。
「忙しい」は心を亡くすと書きます。ワーキングメモリの余裕がなくて、周りが見えなくなる状態を表したのかもしれません。
なお、(3)は(1)、(2)の段階を経てから技術水準が向上したの段階です。それを意識しながら行えば、少しでしょうが、上達が早まるでしょう。
ワーキングメモリの使用容量を少なくするためには訓練が必要です。どのような練習が必要かと言えば、
・多くのパーツを使っていたのを1つにまとめる訓練をすること
・量をこなすこと
・処理スピードを速くすること
が考えられます。
慣れるために一定量をこなす必要はありますが、いたずらに量をこなせば良いというものではありません。仕事をしていれば、その水準の仕事ばかりしていれば良いわけではないでしょう。
技術の重要なポイントを掴んだら、処理スピードを速くする訓練をしてみるのも良いでしょう。
ここでは、あくまでもワーキングメモリの使用量を少なくすることが目的なので、雑にしたり、精神的に疲れてしまったりしてはなりません。
ワーキングメモリの使用量が少なくなる段階になれば、例えは悪いかも知れませんが、いわゆる「ながら仕事」ができるようになります。
日本人は一生懸命やることを好み、「ながら仕事」をすることを嫌います。
そのためか、この段階をあまり重視していません。
なぜこの段階に到達することを1つの水準向上の重要な段階と考えるのでしょうか。
普通なら、達成水準、確実性、スピードを見れば良いと考えるでしょう。
私が重視するのは、
①水準の高い課題だけに集中できるため、高い水準に到達しやすくなります。
②相手によって対応を変えるなどの複雑な行動の組み合わせも可能となります。例えば、相手によって反応を変える場合、処理の前に、問い掛け、情報取得、判断、行動の修正などの工程をこなさなければなりません。処理することにワーキングメモリに余裕があれば、前の複雑な工程でも処理しやすくなります。
③ながら仕事もできます。他の課題と同時並行的に処理できれば、処理時間の短縮につながる場合もあります。
という理由からです。
ワーキングメモリの使用量が少なくなったことは、目に見えてわかりません。本人も明確にわかりません。そのため、評価しづらいです。
一定水準をクリアすれば、良いと考えて、それ以上の教育をしない企業もあるでしょう。
しかし、もう一段階、この段階まで水準を上げることで、これまでとは違った価値を提供することが可能となります。
ワーキングメモリに余裕を持たせる段階を重要と認識し、どのような成長を促すのかを含めて考えると、これまでとは違った技術の生かし方を考えることができます。
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