日本企業は人を大切にしていない。人的資本投資を増やすべき

この記事で話題にしたいのは、日本企業が人的資本投資を増やす必要性についてです。長時間労働に関して批判するものではありません。

「日本企業は人を大切にしていない」と書くことは、日本社会において多くの批判・反論が出る危険な言葉と感じています。

「我が社のモットーは人を大切にすることです」と発言される経営者は少なくありません。

労働分野や経営分野の知識人からも「日本企業は人を大切にしてきた」と発言されるのを聞きます。

本当でしょうか?
「人を大切にする」と言っても多くの視点があります。

日本の人的資本投資は非常に低い水準です。

企業の経済的競争能力を高める無形資産投資の状況を日本、米国、ドイツの3カ国を比較した調査結果が、平成27年版労働白書に掲載されていました。

企業が行う人的資本投資の割合が2010年では1.3%と、他の2国が10%を超えているのと比較して、著しく低いことがわかります。しかも、日本は1995年の5.7%から極端に低下していることがわかります。
(日本の経済成長及びデフレ脱却が難しいと語る3つのデータ 日米独の無形資産投資の状況の図を参照)

人的資本投資を十分にしていないのに、なぜ「人を大切にしている」と言えるのか?と外資系企業にいたことのある人に聞かれたことがあります。

欧米で不況の時、従業員が解雇され、失業者が増加しました。それに比べて日本は解雇されることが少ないです。
日本では、解雇される心配が少ないことが、人を大切にしていると考えられていると答えました。

人を大切にするといっても、
・従業員を解雇するか否か
・従業員に投資するか否か
は別の問題です。

日本企業の活性化を考える際に、「日本企業は人を大切にしてきた」ことが前提になっているように思えます。
そのため、人材育成の分野では思考が止まっているように思えます。

重要なのは、あえて「日本企業は人を大切にしていない」と認識することです。
そこに、日本企業が進む新たな可能性が見えてくるのです。
問題は、どのように人的資本投資をするのか、です。

「研修をしても、すぐに業務に生かせない。だから、意味がない。」という話は良く聞きます。
ほとんどの研修がすぐに業務に生かせないのは当たり前です。
だから、研修をする必要はないと考えるべきではありません。

日本人及び日本社会は、
・長所をより伸ばすこと
・長所を生かして何かをしようとすること
に積極的ではないように思えます。

しかし、新しい価値を作り出すには、このような試行錯誤が必要と考えます。
これは研究者や製品開発者に限ったことではありません。
それを受け入れて、新しい価値を作れるような仕組みを作れば、人的資源投資も増えると考えます。

では、どんな仕組みを考えているのか、については、私の研究課題です。整理できたら、説明したいと思います。

なお、日本企業の人的資本投資に関しては、中間管理職への投資が少ないことには触れないわけにはいきません。
「日本企業の多くが中間管理職の研修をしない、もしくは、少ないことが考えられない」と外資系にいたことのある人に言われたことがあります。

私が衝撃的に感じたのは、成果主義を導入した際に、部下を評価する中間管理職に評価能力向上のための研修を行わなかった企業が多くあったことです。
新たな制度、しかも、会社の根幹に関わる制度導入の際にも研修をしないのです。

中間管理職には中間管理職なりに必要な能力があり、それを伸ばす必要があります。

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