あなたは、日本企業が経済成長をさせるだけの条件を備えていると思いますか?
私は、日本経済が停滞しているのは、日本社会及び日本企業に活力が無くなっているからと考えます。
今日本が苦しんでいるのは、日本経済が長期デフレだからと、デフレを主要因と言う人がいますが、私はそうは思いません。
ここで、私が日本の経済成長及びデフレ脱却が難しいと語る3つのデータを紹介したいと思います。
あなたは、日本が頑張れば必ず報われると感じていますか?
あなたの企業がIT投資をする際、「業務効率化/コスト削減」以外の目的がありますか?
あなたの企業は人的資本投資に積極的ですか?
頑張れば報われると思う人が少なければ、社会に活力が生まれにくくなります。
IT投資が「業務効率化/コスト削減」の目的以外を想定していなければ、より高い価値を作り出すことは難しいです。
人的資本投資が少なければ、競争能力の向上が難しくなります。
判断に必要な情報を整理できる人材を育成できにくくなり、IT投資でより高い価値を生み出すことも難しくなります。
平成28年度横浜市民意識調査によると、「今の世の中は努力すれば報われる社会だ」という言葉に対して、そう思うと答えた人は、たったの2.8%しかいませんでした。どちらかというとそう思うという人を合わせても、15.2%しかいませんでした。
この数字はとても低いと考えます。日本が活力がないのは当たり前とも言えます。
注目すべきなのは、この調査は横浜市民に対して行われたものであることと、昭和63年の数字と比較すると、極端に低下していることです。
横浜市は日本の中でも裕福で社会的に恵まれた人々が住む都市である、と言っても言い過ぎではないでしょう。もちろん、横浜市に住む人の全ての人がそうだとは言いませんが、他の都市で調査されたとしたら、東京都内は別として、それ以外の地域、例えば、関東圏以外の地域では、もっと低い数字になってもおかしくありません。それだけ日本国内で「努力すれば報われる」とは思われていない、と言えるのです。
昭和63年の調査では、「今の世の中は努力すれば報われる社会だ」という言葉に対して、そう思うと答えた人は、20.3%、どちらかというとそう思うという人も合わせたら、44.2%でした。たった28年経っただけで、これだけ減少したというのは、恐ろしい変化と考えますし、これだけ大きな変化をしているのは、恐らく日本だけでしょう。当時とは、もはや別の国と考えた方が良い政策ができるかもしれません。
IT予算の使途については、一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)の「ITを活用した経営に対する日米企業の相違分析」調査結果(2013年10月)によると、日本企業の投資目的が「ITによる業務効率化/コスト削減」に極端に偏っているのに対して、米国の場合は、むしろ業務効率化/コスト削減に対する投資は少なく、幅広い投資目的になっています。
グラフの出典:「攻めのIT」について 経済産業省資料
このグラフを見ても、日本と米国のIT投資目的の違いが一目瞭然です。
通商産業省は、日本が現在行っている「守りのIT投資」から米国が行っている「攻めのIT投資」に転換するように促しています。
現場では、「ITはツールである。攻めるとか守るとかの意思を持っているわけではない。組織の意思を反映している。」と「攻めのIT」との言葉を嫌う人もいます。
裏を返せば、日本企業には挑戦することで付加価値向上できる領域が残っている、とも言えます。では、なぜその領域に挑戦しないのか、が日本経済が回復する1つの鍵になると考えます。この構造を少しでも解明して、企業の業績向上につながる提案をすることが、私の研究課題の1つでもあります。
企業の経済的競争能力を高める無形資産投資の状況を日本、米国、ドイツの3カ国を比較した調査結果が、平成27年版労働白書に掲載されていました。
下記の図を見ますと、投資金額の伸びは他の2国より低いことがわかります。また、企業が行う人的資本投資の割合が2010年では1.3%と、他の2国が10%を超えているのと比較して、著しく低いことがわかります。しかも、日本は1995年の5.7%から極端に低下していることがわかります。
出典:平成27年版労働白書 第2章 経済再生に向けた我が国の課題 第3節 生産性向上に向けた我が国の課題
時代が大きく変化しているのに、人的資本投資の投資割合が低下しているのでは、変化について行きにくくなるのではないでしょうか。
なぜ日本だけが長期デフレなのか。過去の高度経済成長期と変わらない行動様式をそのまま保持しているからと考えます。(なぜ日本だけが長期デフレなのか?デフレを促進する要因とは)
上記3つのデータから、日本社会及び日本企業は、何らかの構造的な問題を抱えており、変化に対応するための活力が低下していると考えられます。それは、変化に対応できていない、もしくは、どう対応して良いのかわかっていない、のかもしれません。
ここに、日本経済がデフレから脱却するためのヒントが隠されているかもしれません。
決して、長期デフレだから日本経済は元気がない、のではないのです。
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