デフレが顕在化する前から一貫して名目賃金は低下しています。
つまり、デフレと密接な関係があると言っても良いデータです。
明らかに密接な関係があるのは事実だから、デフレと名目賃金低下が同時に発生するメカニズムを整理することが、デフレ脱却対策に必要な要素になるでしょう。
それが足りないから、アベノミクスがうまくいくとは思っていません。
なぜ日本だけがデフレなのか、という問いにも答えていません。
だからと言って、デフレの主要因が名目賃金低下というには、説明が不足していると考えます。
賃金低下がデフレにつながる、と言われたら違和感を持たないでしょうか。
仮に名目賃金低下がデフレに密接に関係しているのであれば、賃金を上げれば、デフレが脱却できることになってしまうのではないか、と乱暴に言ってしまいたくなります。
ひょっとして、たびたび安倍首相が経済界に賃金を上げるようにと要請しているのは、そのためでしょうか?
名目賃金が低下することはどのような意味を持つのか、考えてみましょう。
生産者側の観点から立てば、コスト削減の原資になります。
労働者が消費者側の立場に転化した場合、消費するための財源が少なくなったことを意味します。そうなると、需要が小さくなる働きを持ちます。
この両者はデフレになるように働きかける重要な因子であることがわかりまりす。
だからと言って、それだけで名目賃金低下がデフレの主要因とは言えません。
証明する材料が不足している、と考えます。
生産者側の立場で、コスト削減の原資になるのは事実ですが、その削減がダイレクトに価格に反映される、とは言えません。
仮にダイレクトに価格に反映されると主張するなら、その構造を説明しなくてはなりません。
なぜなら、価格は需給のバランスで決まるものだからです。
コスト削減の原資ができたからといって、供給側は価格を低下させなくてはならない、とは言い切れません。
価格を低下しない、すなわち、コスト削減分をそのまま利益になる可能性だってあるからです。
つまり、コスト削減が利益にならない、何らかの強い働きがあると示さなくてはならないことになります。
同様に、消費者側の観点に立てば、名目賃金が低下すれば需要が小さくなる働きがあると言えますが、ダイレクトに消費金額に反映されるとは言えません。
仮に消費金額が名目賃金低下をダイレクトに反映されて減少するとして、それが価格低下にダイレクトに結び付くとは言い切れません。
つまり、名目賃金が低下しても、消費金額の変動幅が少ないことも考えられます。貯金を取り崩したり、借金をする可能性もあります。
消費金額が少なくなったから、と言って、ダイレクトに価格低下に結びつくものでもありません。
確かに、価格は需給で決まるもので、在庫が多くなれば、在庫処分のために価格を安くして販売することは少なくありません。
しかし、在庫が多くならなければ在庫処分はしなくても良いことになるし、儲けにならないと判断したら、その分野からの撤退する場合もあるはずです。
ダイレクトに結びつくと主張するならば、その構造にも説明が必要となります。
名目賃金低下は確かにデフレを促進していると思えますが、仮にそれを主張するならば、名目賃金低下がデフレに関係しているとする要素についての構造を整理しなくてはなりません。
さらに、仮に名目賃金低下がデフレを促進していることが明確になったのであれば、名目賃金低下の理由とその構造を明確にして、その構造を変えるようなデフレ脱却のための対策を立てなくてはなりません。
このように、デフレの主要因が名目賃金低下と主張するには、説明しなくてはならない要素が多く残っていると考えます。
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