日本の長期デフレは価値向上よりもコスト削減を促進しました。
コスト削減が促進され、名目賃金が低下し、さらに…という悪循環が生じます。
これが日本がデフレから抜け出せない構造です。
私は日本のデフレは単なる貨幣現象ではなく、何らかの構造改革が必要な現象と主張しています。
その疑いをもっと踏み込むべきだと考えたきっかけは、吉川 洋氏の『デフレーション―“日本の慢性病”の全貌を解明』を読んだからです。
吉川 洋氏は小物ではありません。
日本のケインジアン代表とも言われる東大教授です。
その彼が紹介した図書の中で、
「デフレは、日本企業のイノベーションに対して、そうした「プロダクト・イノベーション」からコストカットのための「プロセス・イノベーション」へと仕向けるバイアスを生み出した。これこそが、15年のデフレが日本経済に及ぼした最大の害悪なのではないだろうか」(211頁)。
「なぜ日本だけがデフレなのか、という問いに対する答えは、日本だけで名目賃金が下がっているからだ、ということになる」(212頁)。
と主張しています。
つまり、日本はデフレによってプロダクト・イノベーションが少なくなってしまい、コスト削減ばかりに走って、名目賃金を低下させ、デフレを助長させた、と言っているのです。
デフレが明確化する前から名目賃金は低下傾向にあります。
吉川 洋氏をはじめとして、日本のデフレは名目賃金低下が主要因ではないか、と主張している人々がいます。
経済評論家の池田信夫氏もその1人です。
日本の長期デフレは、価値向上よりもコスト削減を促進したことを前提に考えると、これまでと異なった考え方が生まれるかも知れません。
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