日本で個人消費が伸びないのは、年金が不安だからだけではありません。自らの収入が増加する見込みが極めて少ないことと、所属企業の先行き不安もあります。
年金支給額を抑える新たなルールを盛り込んだ改正国民年金法が14日参議院本会議で可決、成立しました。
これにより、21年度からは賃金が物価より下落した場合、賃金に合わせて年金額を改定します。物価が上がっても賃金が下がれば、年金額が下がることになります。
これは応急措置でしかなく、抜本的な改革ではありません。
経済学者の中で「個人消費が伸びないのは年金が不安だから」という人がいます。その数は決して少なくありません。
確かに、多くの人が不安に思っているでしょう。
しかし、それだけが個人消費の伸びない理由なら、日本の年金制度が抜本的に変わらなければ、個人消費が伸びないことになります。
厚生労働省が抜本的な改革をするとはとても思えず、それならば、半永久的に日本はデフレから脱却できないことになってしまいます。
もっと大きな要因は、自らの収入が増加する見込みが極めて少ないことと、所属企業の先行き不安でしょう。
こちらの方をもっと考えなくてはなりません。
安倍氏が再度首相になり、アベノミクスの一環として、首相自ら直接経営側に賃上げを働きかけました。
その結果、多くの企業で賃上げが行われました。
政府が賃上げを企業に働き掛けることは、本来、あってはならないことです。何のために、労働組合があるのでしょうか。
それにも関わらず、賃金の上昇は微々たるものです。
首相自らが直接働きかけしたのに、この程度しか、と考える国民は、将来に希望を見出せないでしょう。
所属企業に対しても同じでしょう。
良くなる見通しが少ないのです。
悪くなる要素はあります。その1つは中国でしょう。中国がこれからも高い経済成長率を保てるとは思えません。その影響は確実に日本にも及んでくるでしょう。
今のままではダメだろう、という気持ちが個人消費を抑えているのではないでしょうか。
かといって、何をどのように変えれば良くなるのか、と言えば、正解がわかりません。
1つだけ言えることは、何かを変えるのであれば、これまで正しいと思われていて、今も守っている法則や仕組みを疑って掛からなければならない、ということでしょう。
疑って掛からなければならない政策の1つにインフレターゲット政策があります。既に5回も達成時期を先送りしました。
5回も先送りする施策には、当然、何か欠陥があると疑わなければなりません。
注意しなければならないのは、日本人にありがちな「…について、考えられることは全てやりました」というように、多くのことに手を出して、全てが中途半端になってしまうことです。
社会構造が複雑に絡み合って、正解がなく、長年克服できない大きな案件は、何かに集中して変えて、確実に状況を変えなければなりません。
その集中すべきものは何かを考える必要があります。
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