量の拡大は安易な問題設定を生じて組織硬直化へ導く

なぜ日本人は「問題解決」を常に考えようとするのでしょうか。

書店に行くと、「問題解決」の本が多く並んでいます。
それだけ売れるのでしょう。
日本人は「問題解決」を常に考えようとしていることを証明しています。

テレビを見てもクイズ番組が数多くあります。
作り手が番組を作りやすい、コストがかからない、などの作り手側の都合もあるでしょう。
番組改編が視聴率で決まるテレビ業界ですから、クイズ番組も一定の視聴率があるのでしょう。
これも日本人の問題解決好きを裏付ける材料かも知れません。

試験には必ず正解があります。
平成27年度の調査では大学・短大進学率(過年度卒含む)は56.5%です。
大学進学率が高くなり、高校生の多くは大学受験をしています。
(昔よりも試験科目が少ない試験もあるようですが)
大学受験に真剣に挑めば挑むほど、正解が必ずある、と考えるように訓練されることになります。

日本人はどのようにするのかを解決するのは得意だが、何をするのかを考えるのは苦手である、と言われます。
「How構築」は得意だが、「What構築」は苦手である、と言い換えることができます。
「What構築」は「How構築」の上位概念になります。
何をするのか、を決めて、どのようにするのかを考える手順です。

ビジネスに置き換えると、
「消費者に購入してもらうには何を提供するか」は「What構築」になります。
「具体的にどのようにするのか」は「How構築」になります。

「What構築」は正解がない問題、「How構築」は正解がある問題と言い換えることができます。
世の中全ての問題に正解があるわけではありません。むしろ、正解がないことが多いでしょう。ビジネスも正解がない問題が多いです。

相手がある話ですから、相手が変われば対応も変わるでしょう。
供給側の自分達も何の技術を磨くのかの選択肢が多くなれば、何を磨くのかによって対応が変わるでしょう。
市場にどのような競合があるかどうかでも対応が変わるでしょう。
圧倒的に強い競合他社がいれば、競合しないようなニッチな市場を探すことが有効になってきます。

なぜ「What構築」は正解がないのでしょうか。
それは多くのことを決める必要があるからです。
つまり、考える範囲が広いからです。
「What構築」の構成要素の1つが変わることによって、問題の内容が変わってしまいます。
だから、ビジネスには正解のない問題が多いのです。

頑張らせれば、質の向上よりも量の拡大を指向する傾向にあります。
来期の利益を上げるためには、コストを何%削減する、提供スピードを数時間は早くする、など、その部署でできる問題設定をするでしょう。

言葉は悪いのですが、これらの行動を「安易な問題設定」と書きました。
経営層が従業員を頑張らせるために、尻を叩けば、現場はそれぞれの問題設定をして努力せざるを得ません。
しかも、ダメだった時の保身の意味もあって、他の人にもわかりやすい目標設定をします。明確な数字が設定できれば尚良いでしょう。
設定した目標を達成したけど売上は上がらなかった、とか、目標は達成できなかったけど、いずれやらなければならない問題だったので次に生かせるとか言えます。

問題解決の効果は、正解に近い答えを導き出したか否かだけではありません。問題解決の前の問題設定が適切かどうかで効果が変わります。
その部署、その担当者が個々に努力する問題をそれぞれ設定することは1つの方法です。
もちろん、現場のそのような努力を全面否定するわけではありません。

ただ、それだけでは、消費者が評価するものから外れていく可能性が高いと言いたいのです。
その部署、その担当者が個々に努力する問題ばかりやっていると、職場で評価される要素をクリアしようとすることばかり考えるようになります。
それこそが、組織硬直化が進行する1つの行動様式なのです。

消費者を喜ばせるという目的から遠ざかってしまい、新たな成功体験を作ろうとする行為からも遠ざかってしまうことが問題です。

改善・改良を続ける製品に対しては、元々作り出したときに何を目的としていたのかを振り返って、その目的と今の行動を照合することも1つの方法です。
その当初の考え方が今とズレている場合、新しい提案をしてみて、消費者が評価してくれそうなものは何かを探る行動も必要です。

つまり、「How構築」ばかりではなく、「What構築」に行き着くような内容も考えるバランスが必要なのです。
これは組織硬直化の問題だけではありません。
現場の努力の効果が低下しかねません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました