マーケットイン、顧客第一主義などの言葉に惑わされない

日本では欧米で使われている知識が翻訳されて伝わります。
マーケット関連の用語も当然、翻訳されて伝わっています。
「マーケットイン」は、生産者が自らの都合で消費者に提供する「プロダクトアウト」の対義語で、消費者が望むものを提供することを意味する概念です。
「顧客第一主義」は顧客を考えることを最優先に取り組むことを意味する概念です。
私が問題視したいのは、わからない概念には気持ちを大切にして、翻訳された用語、または用語の説明をそれの裏付けみたいな使い方にすることが多いことです。
消費者が望んでいるものが何かを一生懸命探れば「マーケットイン」になるとか、顧客のことを最も重視して考えれば「顧客第一主義」になるとか、の状態のことです。

例えば、『価値創出は伸ばす要素と消費者を直接つなぐことが不可欠』(https://shinkashi.com/2016/08/09/nobasuyoso-shohisha/)で例に挙げた、携帯キャリアの市場調査はどうでしょうか。
消費者に聞いて、消費者が望むものを提供しようとしています。
だから、「マーケットイン」の概念に即した行動と考えるでしょうか。「顧客第一主義」の概念に即した行動でしょうか。
結果はどうだったでしょうか。

結果は、ガラケーはスマートフォンに代替されました。
どんなに消費者が望むものを探ろうとする気持ちが強くても、消費者が望むものを探るために市場調査をしても、これまで生産された内容の延長線上でしか質問できなければ、プロダクトアウトの行動と言えます。
なぜなら、これまでの延長線上の活動でしかないからです。それは、「プロダクトアウト」の概念である生産者が自らの都合で消費者に提供することに他なりません。

ここで重要なのは、どんなに消費者のことを考えていても、業界内常識、組織内常識に囚われて、それを変えないために「プロダクトアウト」の状態になりがちなことです。
マーケットインを志向するには、業界内常識、組織内常識と異なる消費者の反応を受け止めようとすることが大切なのです。

では、どうしたら良いのでしょうか。
新しいアプローチを行うことを意識して、そのアプローチに対する顧客の反応を得ようとすることです。
これは、ホームページをウェブ解析して得られる反応も含みます。
試作品に対する消費者の反応も含みます。

試作品での反応を見る場合、伸ばす要素が含まれていることが重要です。
伸ばす要素を使い、かつ、消費者が評価してくれる財の内容を探ることで、業界内常識、組織内常識とは異なる形で高い評価を得ようとすることが大切です。
伸ばす要素を組み込んだ内容であるなら、近い将来、伸ばす要素を使って、新たな価値を創出する可能性が高まります。

良い例ではありませんが、日常のあいさつとか、表面上のおつきあいのようなやりとりばかりしていても相手への理解は深まりません。相手への理解を深めるために、新しいアプローチを工夫することが大切です。

もう一つ指摘しておきたいことがあります。
小さな成功を軽視しないことです。
小さいながらも成功したら、その体験を次に生かすことができます。
小さな成功の中にこそ業界内常識、組織内常識とは異なる法則が隠れている可能性があります。それを知ることができて、挑戦すれば、その内容を生かすことができます。

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