価値創出は伸ばす要素と消費者を直接つなぐことが不可欠

ビジネスにおいて日本人の最大の欠点とは何でしょうか。
日本人は欠点があるとわかれば克服に力を注ぎます。
ならぱ、日本人の行動様式で変われない内容がそれに当てはまると思います。

私は、「新しい価値創出を個人が考えないこと」と答えます。
研究部門の人が新しい技術を研究しています。開発部門の人も商品開発をしています。それなのに、なぜ「新しい価値創出を個人が考えないこと」と答えるのでしょうか。

日本では起業が少ないと良く言われます。
その理由の1つは、アメリカに比べて技術者が起業することが少ないことが挙げられます。その理由は、日本では技術者は技術のことだけを考えれば良いと思われていて、消費者のことまで考える訓練ができていないからではないでしょうか。
過去、国際競争力のあった家電メーカーが衰退していきました。しかし、部品メーカーは相変わらず国際競争力を保っています。
それも「新しい価値創出を個人が考えないこと」が引き起こした現象ではないでしょうか。

代表的な例が携帯電話機メーカーの衰退ではないでしょうか。
ご承知のとおり、携帯電話機メーカーは携帯キャリアに従って新製品を開発し、その全部を買い取りしてもらっていました。
その結果、スマートフォンという、これまでなかった製品が出てきても、すぐに対応できず、国際競争に遅れてしまいました。
すぐに反応できないだけならまだしも、追いつかねばならない段階で防水機能のスマートフォンが出た時は泣きたくなりました。
こんなはじめからわかっている負け戦はありません。
発熱するスマートフォンに防水機能を付けるのは技術的に極めて難しいものがあります。
競争に遅れて追いつかなければならない時に、そんなことをしているひまなどないだろう、と思ったものです。それも携帯キャリアが主導したからです。

スティーブジョブズに日本企業は笑われました。
「日本企業は消費者に聞いてばかりいる。消費者に聞いても、目の前にないものには答えられない。」と。
新しい技術を用いて、かつ、消費者が評価してくれるようなものは何かを探るには、試作品を作って示すしかないのです。

携帯キャリアがいくら市場調査をしても、ろくな進歩を生み出すことができませんでした。
ガラケー全盛期には、日本人は多額の金額を携帯電話に掛けていました。携帯電話機メーカーの人材も周りに比べて優秀だったはずです。それだけ有利な条件にありながら、衰退してしまいました。

携帯電話機メーカーの衰退の教訓は、作る人と市場調査する人を完全分離してはならない、ということです。

とは言え、他社の人間にはできない技術を作ろうとしている個人が同時にターゲット消費者のことを考えるのは、問題の範囲が広すぎて難しいと思えます。

正解のある問いは、問題の範囲が狭いこと、過去の傾向が変わらないことを前提とする等変動要素が少ないことが必要となります。
問題の範囲が広ければ広いほど答えが出にくくなります。

しかし、ビジネスの基本は自分の得手を他の人に評価してもらうことです。
技術を磨くことと、購入してもらう相手を考えることは1つでなくてはならないはずです。
では、どうやって範囲を狭くするのでしょうか。
ずばり、ターゲット消費者を、最も評価してくれそうな消費者に変更し、個人レベルまで絞り込むことです。
この絞り込んだ消費者をベルソナと言います。
ここでのポイントは、「最も評価してくれそうな消費者」にすることです。
個人にまで絞り込めば、問題の範囲が狭くなり、考えやすくなります。

市場規模が大きいと想定するからこそ、人件費を含めた投資ができる、と経営者から反発されそうです。

しかし、時代の変化も個人が考えることを後押ししていると考えます。
なぜでしょうか。
他業界、他業種との競合が起こっているからです。
経済が高度に発展し、多くの産業が発展・成熟化してきています。
業種内の競争に勝っても他業種のヒット商品に代替されてしまうことはあり得ます。
そうなると、ターゲット消費者に向き合い、彼らが評価してくれそうな財を提供しようとすることがより大切になります。

もう一つ重要なことがあります。
市場規模が想定するより小さいことが懸念されるならば、
①伸ばす要素(技術等)を加えて、次の勝負にも使えるようにしておくこと、
②消費者に試して得た反応を次に生かすノウハウを蓄積すること
の2点を重視することです。
そうすることで、今回のチャレンジが将来に生かすことにつながります。

これまで説明した考え方を含んだ新しい価値創出をデザインするにはどのような条件が必要でしょうか
・伸ばす要素を使って、より高い価値のビジネスを創出できるように考える
・伸ばす要素と消費者を1つの様式に入れて、他との関係性で整理する
ことです。

日本人の最大の欠点?である「新しい価値創出を個人が考えないこと」を克服するには、新たな価値創出をデザインする様式が必要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました