行動は環境によって、成果、結果が変わってきます。
環境に適した行動をとれば、成果も結果もより良いものになります。
特定の経済活動の方法が有利か不利かを考える際には、どのような環境にあるのか、過去からどのように環境が変化したのかを考える必要があります。
では、日本において、今の経済環境をどのように考えれば良いのでしょうか。また、高度経済成長期からこれまでにどのような変化したと考えれば良いのでしょうか。
日本は敗戦後、焼け野原のような状態から奇跡のような経済発展をしてきました。
環境変化を考えるに当たって、以下の四つの視点から、戦後まもなく、高度経済成長期、バブル崩壊前、現在の四つの時点を考えてみます。
①市場内での需要と供給の差
②市場内での必需品の割合
③技術導入の対象の存在
④他産業他業種との競合
戦後まもなくの時期は、
①誰もがお金がなく、闇市で食料品を調達する状態でしたので、腹一杯食べたい欲求はあっても、お金がないため、需要と供給の差は少ないと考えられます。
②必需品の割合は、食料がほとんどでほぼ100%でしょう、
③技術導入の対象の存在はありましたが、とても先進国に技術導入するだけの体力がありませんでした。
④必需品である食料を購入するのに精一杯で、他産業他業種との競合はありませんでした。
高度経済成長期の頃は、
①産業が発達しはじめ、多くの労働者が給与を得るようになり、需要が増加しましたが、商品の供給が追いつかず、「売り手市場」でした。
②必需品の割合は、戦後まもなくの頃に比べて小さくなりました。
③技術導入の対象の存在はありました。当時のアメリカをはじめとした先進国から技術導入を行い、電機産業、自動車産業など多くの産業で行われました。
④他産業・他業種との競合は、まだ「売り手市場」だったこともあって、競合はまだ起きていませんでした。
バブル崩壊前の頃は、
①商品およびサービスが多くの企業に供給されて、「売り手市場」から「買い手市場」に転換しつつありました。
②経済の発展段階が高まって、経済の中における必需品の割合はどんどん小さくなりました。
③バブル崩壊前には「アメリカには学ぶことはない」などと言われるようになるほど発展し、技術導入の割合は小さくなりました。
④バブル崩壊前は、最高に景気が良かったこともあって、多くの高額商品が売れました。その意味では、他産業・他業種との競合は起きていなかったと考えられます。
今はどうでしょう。
①供給が需要を上回り、完全な「買い手市場」になりました。
②経済の発展段階が高まり、全体的には必需品の割合が少なくなったと考えられます。一方で、経済格差が激しくなり、低所得者層にとっては、必需品の割合が高くなりました。
多くの製品またはサービスが供給されるだけではなく、経済格差が拡大したため、過去に比べて市場が細切れとなっていると考えられます。
③技術導入する対象はほとんどなくなりました。情報化の進展で技術導入のあり方が変化して、市場が細切れになり、市場の発展のスピードが速くなり、寡占化も進み、過去のように技術導入をする対象はほとんどなくなりました。
④低所得者には所得制約の側面から、それ以外の者は必需品の割合が低くなり、必需品以外の選択肢として多くの産業が発展したことで、他産業・他業種との競合がゆるやかに起きていると考えられます。
今の時代、同業他社との競合だけではなく、他業種との競合も意識するべきでしょう。
さて、四つの視点で日本の時代推移を見てみました。
では、「強みを生かす」考え方と「総合力を高める」考え方の有効性を考えてみましょう。
日本の景気が良かった時代は、「総合力を高める」考え方の方が有効でした。 需要よりも供給が少なかった売り手市場ならば、同業他社との競争を考えることが全てでした。「総合力を高める」方が確実に競争力を高めることができました。
技術導入の対象も多くあれば、「総合力を高める」姿勢がなければ、他社に先を越され、総合力の競争で完全に負けてしまいます。
しかし、今はどうでしょう。
供給が需要を上回る「買い手市場」となり、その上、他産業・他業種との競合も多くなりました。そのため、過去の傾向がそのまま未来に反映しづらくなる、わかりにくい市場になりました。
わかりにくい市場の場合、「総合力を高める」考え方の有効性は小さくなりました。なぜなら、「総合力を高める」評価基準は、業界内でも自社でも、過去に良い結果を得たものをそのまま用いているからです。
頻繁に傾向が変わるわけではありませんが、一度読み間違えると、修正が難しくなります。
その点、「強みを生かす」考え方は、強みが発想のベースにあります。強みを生かすためにどうするのかを考えるため、仮に消費者の購入基準が変化しても、強みと、それを組み合わせた提供する製品またはサービスとの関係でみようとします。
買い手市場のまま推移し、他産業・他業種との競合の対象が多くなるのならば、「強みを生かす」考え方の有効性が高まるでしょう。
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