時の流れは連続しています。当たり前です。タイムマシンでも乗らない限り、連続している時間の流れから抜け出すことはできません。時の流れは、お金持ちも貧乏人も全ての人に平等です。
しかし、市場の推移、すなわち、特定業種の製品またはサービスが販売される市場の推移は、非連続と認識することをお勧めします。時の流れは連続しているのに、です。
なせでしょうか。
それは、他産業・他業種の製品またはサービスと競合していることもあるからです。
例えば、一昔前では「とりあえずビール」と飲み会の最初の注文をしていた人は多かったですが、若い世代がそれをしなくなり、それが年齢の上の世代にも浸透してきて、ビールの消費量が減りました。その分、チューハイなど焼酎を割った甘いお酒の消費量が増加しました。
携帯電話が子供にも普及しだした時、携帯電話代はどこから出てくるのか、が話題になりました。お菓子の購入金額が減少しましたので、携帯電話代の一部はお菓子代から移っている可能性は高いです。
日本において国際競争力が高い主要産業である自動車産業も、若者の車離れが進んでいると言われています。非正規雇用の人々の数が増えたこともあって、所得が少ない人々が多くなったことも背景にあります。それだけでなく、インターネットを介したサービスで楽しむライフスタイルが、車を持つライフスタイルと代替関係にあると考えられます。
他産業・他業種との競合が生まれる背景には、経済発展段階が高い水準まで到達し、多くの産業・業種が発達・成熟したために、製品またはサービスに代替しうる対象が多くなったことが挙げられます。
さらに、供給が需要を上回り、完全な「買い手市場」になったため、市場の括りを超えた試みを行うこともあります。
したがって、上記に上げた例だけではなく、どんな製品またはサービスにも、他産業・他業種との競合があると考えるべきでしょう。
これらの競合は、消費者の判断で、異なる市場の製品またはサービスを同じ市場にあるかの如く扱って、購買するか否かの判断をしていることになります。つまり、個々の消費者の判断によって、市場の括りが変化することになります。
市場の括りを変えて対応すれば良いわけではありません。同じ考え方の消費者もいるでしょうし、そうでない消費者もいます。どのぐらいの割合なのか、どのような要素を重要視するのか、それも個々の消費者の判断になります。
売上高等、何らかの結果が出ますから、これらの競合に関して何らかの傾向を得ることができる時もあるかもしれません。しかし、その傾向は多くの要素が関係しているために、次の機会には全く異なる傾向を出す可能性もあります。
そうなれば、いっそ「市場の推移は非連続」と認識しておいた方が簡単のように思えます。非連続と認識すれば、連続していないことが前提ですから、変化に気づきやすくなります。
裏を返せば、同業種の競争相手を見ていれば良い、わけではなくなったことを意味します。同業種を見る場合は、価格や製品のスペックでの比較での競争をしていました。
改善・改良する取り組みは重要です。しかし、改善・改良の多くは、過去の結果を踏まえて、傾向が変わらないことを前提としています。「これだけのものを作れば、○○よりも売上が上がるはずだ」というような。その前提が崩れることを意味します。
安定しない他産業・他業種との競合をどのように把握すれば良いのでしょうか。
わからないことに対しては、仮説を立てて、検証することが基本になります。 しかし、競合しそうな産業・業種に関する仮説を立てて検証しようとしても、対象が幅広いため、対象自体が競合になるかどうかの当たる確率は低いです。
まして、どの程度影響を受けたかを考えると、さらに当たる確率は低くなります。このようなやり方をとるのは、効果的でないと考えます。
そこで「試す」ことが重要になります。失敗しても、その後にどれぐらい有用な原則・傾向・感触を掴むことができるかが大切になります。
「試す」ことの具体的な手法については、別の記事で説明します。
ポイントは、試作品をターゲット消費者が評価してくれそうな価値に照準を合わせて、仮説を設定し、検証することです。
同業種との価格や製品のスペックの競争とは異なる方法を行う必要があります。
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