強みを生かす前提は高水準に関わる「価値認識」と「優位性」

前の記事『日本人が「強み」を生かす方法に興味ないのは勿体ない』(https://shinkashi.com/2016/07/20/tsuyomi-mottainai/)では、
日本人の少なくない人が「強み」を生かす方法に興味がない理由を説明しました。
簡単に言えば、『「強み」と聞いて、価格交渉で強く出られるぐらい「強い」要素と認識してしまえば、「我が社には強みはありません。」と答えてしまう』ことです。
「強み」は将来、新たな製品またはサービスを、特定のターゲットに提供するために磨くもので、今強くなくても良いと説明しました。

では、「強みを生かす」の反対語は何でしょうか。「総合力を高める」です。

つまり、強みを生かそうとしなくても良いのは、総合力を高めることに一生懸命だからです。多くの場合、弱者である自分の現状を受け入れ、短期的に高い水準の売上を上げようとすれば、改善できる内容を改善して、総合力を高めることに力を注がねばなりません。
裏を返せば、「強みを生かす」のは「総合力を高める」こととは異なるわけです。異なるわけですから、異なる前提が存在することになります。

「総合力を高める」ことと異なる前提とは何でしょうか。
それは、高水準に関わる「価値認識」と「優位性」です。

まず、前者の「高水準に関わる価値認識」について説明します。
高水準の一つの要素が気に入ってもらえれば、他の要素の水準が低くても選んでもらえる、という考え方です。総合力、コストパフォーマンスとは異なる選択をしてもらえる、という考え方です。

世の中は全ての人が総合力、コストパフォーマンスだけで考える人ばかりではありません。
例えば、十分にお金を持っている人やその分野だけはお金を掛けても構わないという人は、コストパフォーマンスを気にしない場合が考えられます。コストパフォーマンスよりも良いものを持ちたいという気持ちを満足させれば、購入してもらえる可能性があります。
その他、デザインにこだわる人は如何に機能が良くてもデザインが悪ければ購入しない場合もあるでしょう。同様に、携帯性、使いやすさ、等特定の機能にこだわる人は、それが良いものだけを購入する場合もあるでしょう。
さらに、世の中には変わり者もいます。人と同じものを持ちたくない人もいます。そのような人には、その人がこだわるような独自性のある特徴を持たせれば、購入してもらう可能性だってあります。

この考え方は、差別化とは少し異なります。
差別化は標準的な要素は揃えた上で、特徴を出すために差別化します。
「高水準に関わる価値認識」は他の製品またはサービスとは異なる価値を提供できていると認識されることです。特定部分が他のものよりも一歩秀でていることになります。

何を「高水準に関わる価値認識」と考えるにはどうしたら良いのか。
簡単に言えば、総合力、コストパフォーマンスだけで考えない人はどのような人なのか、その人がどのように考えるのかを考えることです。
詳しくは後で説明します。

次に後者の「高水準に関わる優位性」について説明します。
強みの要素は、多くの場合、他社に比べて高水準です。
高い水準まで到達した人は、到達していない人に比べて、高い水準に到達した内容を取り入れたアイデアを考え易くなります。少なくとも、到達した内容については正確に再現できますから、その内容については、再現性の高いアイデアを生み易くなります。
同様の考え方から、より高い水準に到達した場合のアイデアを考える場合、現在到達している水準との距離が短ければ短いほど、再現性の高いアイデアを生み易くなります。逆に、自分の分不相応な高い水準のアイデアを生み出した場合、到達するのが難しいだけでなく、本当に想定した通りになるのかも難しいことになります。
以上のことから、高い水準に到達している者はアイデアを生むのに優位な状態にあります。
それだけではありません。提供するまでのスピードが早いことも優位です。
他社が仮に同じアイデアを生んだとしても、その水準まで到達するまでに時間が掛かります。その分、遅く思い出しても、追いつくことができます。
スピードの優位性を生かすには、高水準に到達した、と認識したら、どんどん顧客に試すことで、提供スピードを上げることが有効です。

強みを生かす前提は高水準に関わる「価値認識」と「優位性」です。
これは、今強くない状態の強みにも適用できます。
今強くなくても、強みとして育てようとしているのですから、その分野に関する情報を多く持っています。このことは、その分野で新しいアイデアを生むことに優位性を持ちます。
また、「伸ばす」ための努力をしていて、高い水準に到達する可能性があります。到達してから、アイデアを生む間の時間が短くなれば、他社に先駆けて新しい製品またはサービスを生み出す可能性があります。

なお、高水準に関わる「価値認識」と「優位性」をより生かすには、「絞り込み」を行う能力が重要です。
そのことについては、後で説明します。

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