デフレの要因を考えるのに、なぜ日本人の判断傾向が必要なのでしょうか。恐らく、多くの人がそう思われていると思います。
だが、日本人がデフレを脱却するためには、その判断傾向を認識しているかどうかでデフレの要因の理解度が違ってきます。対策の効果も変わってきます。
その認識しておくべき日本人の判断傾向の一つが、「日本人は連続性の要素を抽出した「神話」を大切にする」ことです。
どのような意味でしょうか。
それは、システムがなくても、構造がなくても、過去の実績があれば、その数字がそのまま推移すると考えがちの民族であることです。
つまり、過去からの連続性を大切にしがちということです。
一つの例を挙げます。
バブル崩壊前で土地価格が高騰していた時、同僚が毎日大きな鞄を重そうに持って通勤していました。毎日毎日多く本や書類を持ち帰って仕事したり、勉強したりしているのか、と思って感心していました。
「腕の力が強くなる仕事は大変だね。」と声を掛けました。がっかりしたのですが、彼が取り出したのは、住宅情報誌でした。バブル崩壊前はとてつもなく分厚かったです。
「すぐにでも家を買わないと、土地がどんどん値上がりしてしまう。」と彼は言います。時間のある時は住宅情報誌を開いているようです。
それを聞いた私が「誰もが買えなくなるぐらい土地の価格が上がったら、値下がりするんじゃないの。」と軽く言いました。それを聞いた彼が大声で叫びました。
「土地の価格は今まで下がったことがないんだよ!」
俗に言う、土地神話です。
結果が分かっている今では、何てバカな奴だ、と思う人もいるかもしれません。
当時は例に挙げた彼だけではなく、大勢の人が信じていました。信じていたからこそ、大きなバブルとなり、派手に爆発したのです。私のように醒めたことを言う人間は少数派でした。
バブル崩壊前の土地神話は極端な例かも知れません。
他の国にもバブルはあります。また、日本だって、他の時期にも小さいながらもバブルはあります。バブルは実態経済よりも値上がり期待が高いまま推移することで生まれます。そして、必ず反転してバブルが崩壊します。その意味では、他の国でも、将来の日本でも起こりえます。
しかし、例に挙げた「土地神話」はバブルの値上がり期待の一つではありますが、「土地の価格は今まで下がったことがない」という過去の実績を一つの原則として抽出し、それが判断基準の一つになっていることが他のものと異なります。
問題は、その原則がシステムがなくても、構造がなくても、成立してしまうことです。
物事は、周辺環境によって成果が大きく左右されます。システムや構造が機能するのは、周辺環境にある何かが条件となって、作用したからです。つまり、周辺環境が変われば、成果の出来も変わります。だからこそ、システムや構造まで関心を持つことが大切なのです。
当時のバブル崩壊のバブル大きくなったのは、「土地神話」が「神話」として信じられたことが大きな理由の一つと考えます。どの程度、と証明はできませんが。
日本人は、過去の実績があれば、「日本人は連続性の要素を抽出した「神話」を大切にする」傾向があります。
それが時々顔を出します。
これからデフレの要因を説明する際に使いますので、頭の隅にでも置いておいて下さい。
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