アベノミクス最大の功績は、リフレ派が主張するインフレターゲット政策を大々的に実験して失敗したことです。
アベノミクスという形で、当時の国民の熱狂的な期待を背負って実施しても、日本経済では機能しないことを証明して見せました。
日本銀行は4月28日の金融政策決定会合で、物価上昇率2%の目標達成時期の見通しを「2017年度前半ごろ」から「2017年度中」に先送りしました。2013年の大規模緩和開始からは4度目となります。
4度も先送りして、失敗ではない、とは言えないでしょう。
失われた20年と言われますが、バブル崩壊以降から数えれば、停滞した日本経済は失われた25年になってしまいました。
昔、戦争を知らない子供達、という歌がありましたが、バブルを知らない子供達が社会人になっている時代です。
停滞した経済状況に疲れて、多くの国民が「何でも良いから、早く経済を回復して欲しい」と景気回復を切望していると言っても過言ではないでしょう。
その切望がリフレ派の主張を取り入れることになりました。
リフレ派とはどのような人達でしょうか。
知恵蔵2015(https://kotobank.jp/word/%E3%83%AA%E3%83%95%E3%83%AC%E6%B4%BE-189488)から抜粋しますと、
「緩慢なインフレを継続させることにより、経済の安定成長を図ることができるとするマクロ経済学の理論を喧伝(けんでん)、もしくは政策に取り入れようとする人々のこと。」
「リフレ派の主張は、政府・中央銀行が数パーセント程度の緩慢な物価上昇率をインフレターゲットとして意図的に定めるとともに、長期国債を発行して一定期間これを中央銀行が無制限に買い上げることで、通貨供給量を増加させて不況から抜け出すことが可能だとするもの。」
とあります。
リフレ派はアベノミクス誕生前からインフレターゲット政策導入を主張していました。
これまで日本はインフレターゲット政策を取り入れなかった唯一の先進国でした。
インフレターゲット政策は、物価上昇率に対して政府・中央銀行が一定の範囲の目標を定め、それに収まるように金融政策を行うことです。
日本の物価は比較的安定していました。インフレターゲット政策を行う必要性がなかったのです。
アベノミクスではデフレの時にインフレターゲット政策を取り入れる、という意味で画期的でした。
インフレターゲット政策がデフレの時に有効に機能した例は世界にありません。
物価上昇率がプラスの時に機能していた政策が、果たしてマイナスの時にも機能するのだろうか?という当然の疑問がありました。反対する人々もいました。
いわば、日本は壮大な実験をしたわけです。
リフレ派の主張の内容が良くわからない人にも、インフレターゲット政策は歓迎を受けました。
円安を期待する人々です。
どの本か忘れましたが、「1ドル115円になれば景気は回復する」と書いていた本も見かけました。
民主党時代の無策による円高で輸出産業が苦しんでいることは誰もがわかっていました。
だから、円安になれば、輸出が増えて、日本経済が回復すると多くの人々が期待しました。
残念ながら、企業の工場が海外移転を終えた後だったこともあって、それほど輸出は伸びませんでしたが。
彼らの存在もあってか、インフレターゲット政策に対する反対意見は少数派になってしまいました。
しかも、アベノミクスという形で、当時の国民の熱狂的な期待を背負って、政策を行う上で、これ以上無い、と言っても過言ではない良い状態で実施されました。
それなのに、失敗しました。
日本経済の停滞が続くのであれば、懸念材料があったとしても、やってみる価値はあったのではないでしょうか。
壮大な実験をやったことに価値があります。
やらなければ、いつまで経っても、やっていれば良かった、と言われかねません。
失敗を失敗と認めて、早期に新たな施策に転換することが大切です。
政策の有効性が低いのは、有効性を阻む何らかの問題があるはずです。
理論が間違っているのでしょうか、政策が十分ではなかったのでしょうか、日本経済が理論を適応できる条件になかったのでしょうか。
タイミングは、企業の工場が海外移転を進める前の民主党時代か、それ以前に行っていれば、輸出が増え、全く違った効果が出ていたでしょう。この点については、残念と言わざるを得ません。
政策は十分だったでしょう。アベノミクスという形で、同時に公共投資も行われ、当時の国民の熱狂的な期待を背負って、実施されたのですから。
理論は間違っていないのでしょう。
ならば、日本経済が理論を適応できる条件になかったことを疑ってみるべきではないでしょうか。
リフレ派の世界的な権威と言われる経済学者がいる国とは異なる日本の特殊な労働制度があります。(他国の労働制度では長期デフレに耐えられない)そこに何かヒントがあるかも知れません。
日本は過去に高度経済成長を成し遂げました。その時に得た行動様式がデフレに関係しているのかも知れません。(なぜ日本だけが長期デフレなのか?デフレを促進する要因とは)
アベノミクス最大の功績は株高という人がいます。
自民党候補がアベノミクス実施後に行った選挙の時に、一番に株高になったことを主張していたことを思い出します。
株高ぐらいしか声高に言えなかったのです。
アベノミクスの効果が庶民まで浸透していないことは多くの人々に共通した認識です。
株式市場は未だに円安によって輸出産業が儲かるという図式で、円安になると輸出産業の株が高くなっているだけです。
株高はインフレターゲット政策が導入されなければ、起きなかったでしょう。その意味では、最大の功績とは言えないでしょう。
リフレ派の人々が失敗を認め、失敗から学んだ内容を社会に還元することを望みます。
それが、日本は経済回復に向けて新たな一歩となるのです。(リフレ派が失敗を認め、案件創出促進がデフレ脱却の第一歩)
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